東京オリンピックの後の不動産市況は?

2019/10/29

2020年の東京オリンピック開催を見据え、東京都内の物件を中心に不動産市場が活況になっています。しかしここ最近よく耳にするのが「オリンピックが終わったら大きく値下がりし、不動産市場は不況になるのでは?」という声です。

不動産投資家の中には価格下落を懸念し、高値のうちに売り抜けようと、すでに不動産を売却して利益を確定している方もいると聞きますが、果たして本当にその判断と選択は正しいのでしょうか?


☆人口減少で不動産市況も悪化?

不動産投資において考えておくべき問題の一つに、「人口減少」があります。経済の拡大には人口の増加が大事ですが、日本は今後も人口減少が加速して行くだろうと見られています。しかし一方で、日本で暮らす外国人の人口は増えているのも事実です。

厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、2018年末の外国人の労働者数は146万人と、過去最多を更新しました。深刻な人手不足を背景に、企業は積極的に外国人労働者を雇用しているからです。

オリンピックは東京を世界にアピールできる機会にもなるので、開催後は東京でビジネスをしたいという外国企業や、東京で働きたいという外国人がさらに増えることが予想されます。

また労働者だけではなく、外国人旅行者の入り込み数も増えています。東京オリンピックの開催が近づく中、政府は2020年に訪日外国人数4,000万人という目標を掲げ、国をあげてインバウンド誘致に取り組んでいます。訪日外国人者は2018年に初めて3000万人を突破しましたが、オリンピックをきっかけにますます増える可能性は高いと思います。


☆訪人外国人がもたらすインバウンド効果

そして、この訪日外国人がもたらす「インバウンド効果」ですが、国土交通省の観光庁が発表した「訪日外国人消費動向」の年次報告書によると、訪日外国人の旅行消費額は4兆4,162億円で、前年の3兆7,476億円に比べて17.8%の増加と2桁台の成長率となりました。

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インバウンドによる日本国内での消費はこれからも好調な見通しで、日本にもたらす経済効果は高いと見られています。訪日外国人はそれぞれ目的があって日本を訪れますが、滞在中は宿泊費・飲食費・交通費が必ずかかるため、呼び込むだけで様々なところにお金を落とすことになります。

※参考資料:観光庁 報道資料より

また、多くの業種でインバウンドによる経済効果が期待でき、近年では観光業、小売業、サービス業でインバウンドに力を入れているところも多くなっています。オリンピック開催中には宿泊するホテルや旅館の不足が予想されており、いたるところでホテルの建設が進められています。

みずほフィナンシャルグループの試算によると、オリンピック・パラリンピックによる経済効果は直接効果・付随効果も含めると全体で約30兆円と見られています。


☆進むインフラ整備・開発

さらに、こうしたインバウンド効果が何をもたらすかといえば、インフラの開発・整備です。東京ではオリンピックのために、選手村や競技施設の建設が急ピッチで進んでいます。また試合の観戦に来た訪日外国人を受け入れる宿泊施設の建設、空港や交通機関などの大規模なインフラ整備も進められており、品川駅と田町駅の間には、2020年春に新しい駅「高輪ゲートウェイ」駅が、地下鉄日比谷線には「虎ノ門ヒルズ」駅が誕生します。虎ノ門ヒルズと六本木ヒルズの間には、大阪の「あべのハルカス」を超える日本一の超高層ビルが建設中です。大手町や渋谷などでは、超大型の開発が進行しており、完成は2027年度の予定で、これから10年近く工事は続きます。渋谷や中野などの再開発も旺盛です。また、リニア中央新幹線の開通(品川〜名古屋間)も2027年を予定しています。

こうしたインフラ整備や開発が不動産価格にプラスの影響を与えることは間違いありません。


☆過去の海外開催のオリンピック前後の不動産価格

ここで過去、海外で夏季オリンピックが開催された都市のオリンピック開催前後の住宅価格に関するデータを見てみます。

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みずほ情報研究所の資料によると、ロンドン大会前の4大会においては、オリンピック後に、住宅価格が急落するという現象は見受けられませんでした。

前回の東京オリンピック(1964年開催)のときの日本のような新興国や経済規模が小さい国の場合、オリンピックによる経済効果・不動産マーケットに与える影響は多大なものがあると考えられますが、現在の日本のような先進国、経済大国では、オリンピックによる建設特需等というのは不動産マーケット全体から見ると、その影響は限定的だと言えるでしょう。

※参考資料:みずほ情報研究所


☆まとめ

これらの見解から私たちは、東京オリンピック後も不動産投資は一定の需要があり、大幅な価格上昇は見込めなくとも、世間で言われるほど価格の下落はないと予想しています。そして、不動産投資をするのであれば、どこでもいいというわけではなくオリンピック後も見据えて東京がよいと考えます。

日本の人口が減少する中で、東京は2015年の1351万人から2017年1月に1365万人と人口が増え、2018年にはさらに10万人以上増えて1375万人となっています。安定して長期的に賃貸需要があることを考えると、人口密度が高いということは大きなポイントになると言えます。

また、さらに細かくエリアを選定することも大事な要素として挙げられるでしょう。現在、上場企業約3600社のうち、約半数が東京に本社を置いており、最も多いエリアが港区、千代田区、中央区、次いで渋谷区、新宿区、品川区という順となっています。上場企業が集中しているエリアでは、人も仕事も集中しているので賃貸需要は高いと言えますし、このエリアに直接アクセスができるような利便性がいいエリアも需要が高いと言えます。

不動産投資は長期的なスタンスでの投資になります。人生100年時代を考えると、長きにわたって賃貸がつく物件を選ぶことが重要だと思いますし、目先の景気に踊らされることなく、長い人生を見据えて物件を選ぶことが大切です。